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蝕に攫われた春 【十二国記 延王】

第4章 仙籍


「今日の夜遊びは、六太や朱衡には絶対に内緒だぞ? あいつらに知られたら、俺はともかく、お前さんまでどんなお説教を食らうか分かったもんじゃねえからな」


「ふふ、そうですね。六太君には『ずるい!』って怒られちゃいそうですし、朱衡様には……」


「想像しただけで頭が痛くなるだろ? だから、これは俺とお前さんだけの秘密だ」


「はい! 二人だけの秘密、ですね」




悪戯っぽく笑い合う二人の声は、賑やかな祭りの喧騒に心地よく溶けていった。
屋台でお腹を満たした二人は、人だかりができている広場へと足を向けた。



「おい、。あっちで何かやってるぞ」


「わあ、凄い……! 人が宙を舞っています!」



遠目からでもよく見える男の皿回しや、火を噴く大男のダイナミックな曲芸。
ハラハラするような妙技が決まるたびに、周囲からは地響きのような大歓声と拍手が沸き起こる。
も目をきらきらと輝かせて楽しそうに手を叩いた。



曲芸を一通り楽しんだ後は、祭りの夜市をぶらぶらと冷やかしながら歩く。
並んでいるのは珍しい布地や、異国情緒あふれる小細工、きらきらとした安価な装飾品。
その中である露店の前に差し掛かった時、の足がふと止まった。




「……綺麗」



思わず小さな呟きが漏れる。
彼女の視線の先にあったのは、一組の耳飾りだった。
下界の夜市で売られているものだから、宮廷にあるような最高級の真珠や翡翠のような価値はない。
けれど、街の灯籠の光を浴びて夜空の星のように細やかに輝くその飾りが、なぜか無性に愛おしく思えて、は引き込まれるように見つめていた。



隣で彼女の視線を追っていた尚隆は、露店のおやじに「おい、それを見せてくれ」と声をかけ、躊躇いもなく小銭を支払ってその耳飾り受け取った。




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