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蝕に攫われた春 【十二国記 延王】

第4章 仙籍


「ほら、熱いから気をつけて食えよ」


「わあ、ありがとうございます! ……んんっ、すごく美味しいです!」




一口かぶりついた瞬間、口いっぱいに広がるお肉のジューシーな旨味に、の目がパッと輝いた。
玄英宮で出される上品な宮廷料理とはまた違う、下界ならではの濃くて力強い味わいだ。



「風漢さんも食べてみてください、本当に美味しいですから!」


「どれ……。おう、中々な味付けだ。どれ、次はあっちの揚げ餅でも買ってみるか?」


「いいんですか!? 食べたいです!」



それからのはまるで今までの不安が嘘だったかのように、年相応にはしゃいで買い食いを楽しんだ。
言葉が分かるようになった喜びも手伝って、売り子のおじさんと「おまけしとくよ!」「ありがとうございます!」なんて言葉を交わすことすら新鮮でたまらなく楽しかった。
両手に色んな串や包みを抱え、本当に幸せそうにもぐもぐと頬張る。
尚隆はそんな彼女の横を歩きながら、いつになく優しく温かい眼差しでその姿を見つめていた。



「どうだ、。楽しいか?」


「はい、とっても!」



は振り返り、口元にタレを少しつけたまま満面の笑みで幸せそうに微笑んだ。
街の灯籠の光に照らされたその笑顔は男装で隠していても、尚隆の胸を不意にドキリとさせるほどに眩しい。
尚隆は彼女の口元を指先で器用にタレを拭ってやりながら、いつもの悪戯っぽい笑みを浮かべた。



「な? 来て良かったろ」


「はい。連れてきてくださって、本当に感謝しています。……言葉が分かるのって、こんなに楽しいことだったんですね」


「そいつは重労働を乗り越えたお前さんの実力さ」




タレを拭われ、恥ずかしそうに少し顔を赤くしながら微笑むに、尚隆は秘密の相談でもするかのように、耳元に顔を近づけた。



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