第4章 仙籍
そこに事前に待たせていた騎獣の前に来ると、尚隆はひょいとの身体を抱き上げ、先に鞍の上へと乗せる。
「えっ、あの、尚隆様……!?」
驚く間もなく、尚隆自身も素早くその後ろへと飛び乗った。
必然的にの後ろから覆い被さるようにして、その細い身体を腕の中にすっぽりと抱きしめるような形になる。
「ひゃっ……!?」
あまりの密着振りに、の身体は一瞬でカチコチに固まってしまった。
男装のために胸元を布で締めているとはいえ、背中に押し当てられる尚隆の胸板の厚みや、自分の身体を囲むように手綱を握る逞しい腕の存在感が嫌というほど伝わってくる。
「おいおい、そんなに怯えるな。振り落とされないようにな」
後ろから耳元で楽しげに囁いた尚隆は、手綱を引いて騎獣を地から蹴り上がらせた。
グン、と身体が浮き上がり二人を乗せた騎獣は一気に夜の虚空へと駆け上がっていく。
初めて尚隆の命で朱衡に救われて玄英宮へ連れてこられて以来の、久しぶりの外出。
夜風を切り裂いて空高く飛ぶ騎獣の恐ろしさと、密かに想いを寄せる尚隆に後ろから抱きすくめられているというこの状況に、は顔から火が出るほど赤くなり、緊張で固まっていた。
そんな彼女の様子が背中越しに伝わったのだろう、尚隆が喉を鳴らして笑った。
「なんだ、そんなに騎獣に乗るのが怖いか? 落としはしないから、もう少し力を抜け。下界に着く前に疲れるぞ」
(ち、違うんです……! 怖いんじゃなくて、別の意味で緊張して……!)
本当の理由を言えるはずもなく、が真っ赤な顔で口をもごもごとさせていると、尚隆は「ほら」と彼女の細い腰をぐっと更に己へと引き寄せた。
「そう強張るなって。ほら、俺に寄りかかれ」
さらに隙間を無くすように身体をぴったりと密着させられ、は完全にキャパシティをオーバーして「う、うあ……っ」と声にならない悲鳴を上げながら余計に硬直してしまった。
背中から伝わる彼の体温が熱くて、心臓が爆発しそうだ。
耳まで真っ赤にし石のように固まる彼女のウブな反応が可笑しくてたまらないといった風に、尚隆は夜空に低く愉しげな笑い声を響かせるのだった。