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蝕に攫われた春 【十二国記 延王】

第4章 仙籍


「えっ……!? い、今からですか!?」


「ああ。下界に少しな。お前さんに見せたいものがある。……あぁ、そのままだと色々と目立ちすぎるからな、そこの女官、こいつに男装をさせろ。終わるまで部屋の外で待っててやる」



尚隆はそれだけ言い残すと、驚く二人を置いてひらりと身軽に部屋の外へと出ていってしまった。




「な、何をお考えなのですか、主上は……」



残された女官は困惑し呆然と立ち尽くしていたが、王の命令とあれば逆らうわけにもいかない。




「様、おいたわしや……。ですが、主上があのように仰る以上、お供せねばなりませんね。……よし、徹底的にその美しさを隠しますわよ!」



女官はすぐに宮中の若い男物の衣服をどこからか調達してきた。
の豊かな胸元をしっかりと布で隠し、ゆったりとした直衣を着せる。
さらに、その隠しきれない美貌と艶やかな長い髪を少しでも世間の目から隠すため結い上げると、頭と顔の下半分に布を丁寧に巻き付けた。



「うん……これなら、一見すればどこかの良家のお坊ちゃんに見えますわ。……ですが様、くれぐれもお気をつけくださいね。主上はああ見えて、手癖が悪いお方ですから」



「ふふ、大丈夫ですよ。尚隆様は私を助けてくれた、大切な恩人で、無粋な真似はしませんよ……では、行ってきます!」




男装の窮屈さに少し戸惑いながらも、は女官の心配そうな、けれど温かい見送りを受け、そっと部屋の扉を開けた。外では、壁に背を預けた風漢が、退屈そうに待っていた。



扉の外で待っていた尚隆は、男装姿で出てきたを頭の先からつま先まで一瞥すると、満足げに一つ頷いた。




「よし、上出来だ。これなら遠目には小綺麗な小姓にしか見えねえな。……行くぞ」




尚隆は足音を盗みながら、慣れた足取りで夜の宮廷を進んでいく。
そのまま朱衡たちの監視の目を完全にすり抜け、内宮から騎獣の繋ぎ場がある門まで、あっという間にを連れ出してしまった。






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