第3章 玄英宮に響く歌声
一方、控え室へと戻ったは扉が閉まった瞬間に「はぁ……っ」と大きなため息を吐き出した。
途端に張り詰めていた緊張の糸がプツリと切れてしまう。
「……ぁ、れ?」
慣れない贅沢で重い礼服と、国を背負うほどの凄まじいプレッシャー。
それが一気に押し寄せ膝がガクガクと震えた。
そのまま力が入らなくなり、長椅子になだれ込むようにして座り込んでしまう。
文字通り腰が抜けて立てなくなってしまったのだ。
「お疲れ様でごさいました、様。本当に、本当に素晴らしかったですわ!」
付き添いの女官が、感動に目を潤ませながら駆け寄ってきた。
「さあ、まずは温かいお茶をどうぞ。緊張なさったでしょう? 一息ついたら、楽な着物に着替えましょうね」
「……ありがとう、ございます……。本当に、緊張しました……。声が出なくなったらどうしようって……」
差し出された茶杯を両手で受け取るが、まだ指先が微かに震えている。
温かいお茶を口に含み、ようやく人心地がついたその時だった。
バァン!! と、控え室の重厚な扉が勢いよく押し開けられた。
「!!」
「きゃっ!? ……六太君!?」
現れたのは式典を終えた足でそのまま走ってきたらしい六太だった。
いつもなら退屈な儀式の後は真っ先に逃げ出そうとする麒麟が、今は頬を紅潮させ興奮を隠せない様子での元へと突撃してきた。
「! めっちゃくちゃ良かったぞ!!」
六太は部屋に飛び込んでくるなり、目をきらきらと輝かせて大絶賛した。
その勢いのままの目の前まで詰め寄ると、今度は急にぷくっと頬を膨らませて少し拗ねたように唇を尖らせる。
「……だけどさ、なんで歌うこと、俺に教えてくれなかったんだよ〜! 知ってたら最初からもっと真面目に席に座ってたのに!」
「ふふ、ごめんなさい、六太君。でも……尚隆様が『六太にはサプライズにして驚かせるんだ』って仰っていたので……」
が申し訳なさそうに苦笑いしていると、開いたままの扉から低く愉しげな笑い声が響いてきた。