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蝕に攫われた春 【十二国記 延王】

第3章 玄英宮に響く歌声


それからの日々は、これまでにないほど慌ただしいものとなった。



「殿、ここの旋律ですが、祭礼の儀法に合わせて、もう少し厳かに響かせましょう」


「はい! 旋律を少し崩して、こちらの楽器の音色に寄り添うようにしてみます」



宮廷の楽士たちも、この国の大事な式典に自分たちの「新しい音楽」が組み込まれるとあって、いつになく目の色を変えて研鑽に励んでいた。
朝から晩まで楽器の音色との歌声が、式典の準備に追われる部屋に響き渡る。



「……あいつらずいぶんと本気だな。最近じゃ俺が近づいても、楽士のじいさんたちに『邪魔です主上』って追い返される」



こっそり様子見に来た尚隆がそんな愚痴をこぼすほど、彼らは一丸となって準備を進めていた。



季節が移り変わる風の中で、はただ守られるだけの少女から、国を背負う王のために歌う一人の楽士として、確かな一歩を踏み出そうとしていた。



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