第9章 さあ、時は満ちた
「俺や理子ちゃんに相談したい気持ちは分からんでもないが、」
「………」
「わかんねぇことは本人に聞くのが1番手っ取り早いと思います」
「できるわけないでしょ」
「なんで」
「………っ、……言いたくない」
「お前もたいがい頑固だねぇ」
喉元まで出かかった決定的な言葉を必死に飲み込んだ。言ってしまえば全部変わる。研磨くんを見る目もそのせいで一喜一憂してしまう心も。そわそわと思考が落ち着きをなくして、安定していた感情も波立つ。
だけどそうなるには少しの光も必要だと思う。危険な橋を、命綱なしに渡る度胸なんて私にはないの。
「そもそもアイツの分析ばっかしてるってことは、」
「ほんっとお願い、まじで言わないで」
「抗うから面倒なんだよ。開き直ったらめっちゃ楽だぞ?」
「………」
「………」
「……うぅ、」
「ほら、」
「………」
「はやく」
「………あーもう!わかった!分かりました!好きですよ好きになりましたよ!ちょっとのことで簡単に落ちるチョロ子ですよ私は!」
「いやそこまで開き直れとは言ってねぇけど」
前略理子さま。あなたの派遣した救世主とやらは、蓋を開けてみれば言葉巧みに誘導魔法まで使う、立派な悪の使者でした。
断崖絶壁、落ちたら即ゲームオーバー。命綱なしにそこに立たされた私の頭は、僅かに残っていた二日酔いの頭痛とは、また別の痛みで顔が歪んだ。