第9章 さあ、時は満ちた
「けど丸々100パー善意だけでそうしたわけじゃないだろうな」
「どう言う意味ですか」
「んー、なんだろうな、独占欲っつーか、マーキング?」
「は?え?マ、……マ?………え?」
「おい落ち着け」
ほら言わんこっちゃない。もしこれが理子ならこんな空気にはならない。痛いところを突かれても、ペースが乱れることもない。でも彼は違う。
幼馴染で性格をよく知っているからこそ、変に緊張感が纏わりつく。だから恋バナは女同士でしたかったんだよ。
理解不能な言葉を、なんの躊躇いもなく豪速球で投げつける黒尾さんの意図が読めない、掴めない、そもそもマーキングってなに。
「自分家のベッド入る時、思い出さねぇ?研磨のこと」
「今のところは」
「これから先は分かんないでしょ、研磨のテリトリーに入っちゃった後だし?しかも色々言われみたいだし?」
「………うん、もう大丈夫、それ以上言わなくていいです」
「研磨ん家の空気とか、ベッドの感触とか匂いとか」
「言わなくていいって言ってるのに」
「アイツは故意にやったわけじゃないかもだけど、無意識にでも記憶のマーキングされたってわけ。良かったな、おめでとう」
この人は他人の頭の中を見透かす天才だなと思った。それもほんの数時間前の私の思考をご丁寧に言語化までして。
分かってるよそんなの。自宅までの帰り道から、ここへ来るまでずっと彼がちらついてるのも、それを無理やり消そうと必死な理由も。分かってるけど。