第1章 放課後/ブルーロック/糸師凛/幼馴染み/日常
好きな食べ物を前にすれば自分だって結構味わったりするくせに、なんて悪態が頭をよぎる。今は練習前のカロリー摂取が目的なだけだということがありありと雰囲気に出ている。
店はざわざわしているが、この空間だけはなぜか静かだ。会話が弾むでもないし楽しいかと言われるとそれも違う。ほんのり眠気すら起ってくる気がする。
そのとき。
「え!?凛!?」
横から明るい声がする。声の主に顔を向けると驚きと高揚の乗る表情の男子学生が一人いた。繭は知らないその人物は真っ直ぐに凛に話しかけてくる。
「偶然じゃん!地元この辺なんだっけ?つーかお前の制服姿めちゃ新鮮だわ」
「……潔」
凛の顔つきが一気に変わる様子はやや興味深い。
日頃の凛は近寄りがたい雰囲気を持っているし妙に冷たくも見えるが、サッカー以外のことには実際はまるで興味がないだけだ。逆に言えば、凛から登場一つでこれだけの表情を引き出したこの人物は凛にとっては意味深な人間なのだろう、例えば、そう、兄にも似たような。
潔と呼ばれた男子高生は今度は繭にちらりとだけ視線を投げてくる。
「あ、ワリ……邪魔した?お前、……彼女とか、いたんだな」
「勝手に勘違いしてんじゃねえよ」
「あ、そういうんじゃないです!」
潔の視線がテーブルに置かれたままになっている封筒に落ちた。
丸みある可愛らしい文字で「糸師凛くんへ」と書いてあるのだからこういうものを日頃は見慣れない人間には刺激もあるのだろう。
潔はぎょっとした目をしたり、はっとした口をしたり、気まずそうに繭をちらちら見たり、凛と違って表情が豊かだ、繭にはえらく新鮮に見えた。
「凛……お前……マジかよ……っ」
「ほら。受け取らないから私が書いたと思われてる」
「知るか。いらねぇっつったろ」
今にも凛が暴言を吐き場の空気をぶち壊しそうな雰囲気だ。繭は先回りするように、潔に話しかけてみる。
「もしかして、サッカーされてる方ですか?」
「えっ、はい。まあ……」
ほんのり照れたように返す潔の反応は、初々しさがあり繭も自然と笑顔が出る。
「ブルーロックの人?」
「あ、そうっす」
「じゃあサッカーうまいんだ」
「そんな、まだ全然」