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時空の絆

第4章 時代を駆ける者



第二十四話:帰り道の二人


新選組の屯所付近を離れ、人通りの少ない裏通りへと差し掛かった頃。
前を歩く恭太郎さんの足が、ふと止まった。
夕暮れの残光が、彼の端正な横顔を赤く染めている。

「…… 桜子殿。一つ、伺ってもよろしいか」

「はい、何ですか?」

恭太郎さんは振り返らず、前方の闇を見つめたまま問いかけた。

「……沖田殿は、何の病なのですか。先ほどの咳、そして南方先生のあのご様子。ただの風邪ではないことくらい、私にも分かります」

私は、胸の奥がキュッと締め付けられるのを感じた。
この時代において、その病名は死の宣告に等しい。

「……『労咳(ろうがい)』です」

その言葉が口から出た瞬間、恭太郎さんの肩が微かに震えた。

「労咳……。やはり、そうでしたか。あの若さで、なんという非情な運命か……」

江戸の街では、労咳は「不治の病」として恐れられている。一度かかれば、体力を削られ、血を吐き、孤独に死を待つしかない。それがこの時代の常識だ。

「…… 桜子殿のいた『未来』では、それは治る病なのですか?」

恭太郎さんが、今度は私の方を真っ直ぐに見て問いかけた。その瞳には、武士としての諦念と、それでもどこかで奇跡を信じたいと願う、一人の人間としての渇望が混ざり合っていた。

「はい」

私は力強く頷いた。

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