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時空の絆

第12章 未来への道標



年月が流れ、仁も白髪の目立つ年齢になっていた。
それでも背筋が伸び、現役でメスも握っている。

ある春の日、仁の息子夫婦に、待望の女の子が生まれた。

(今でも信じられない。自分が結婚し子供をもうけ、ついには孫まで…)

産院のベッドで、仁は生まれたばかりの赤ん坊を抱き上げた。
その子は、まだ目も開かないうちから、仁の指をぎゅっと握りしめまた。その確かな温もり、力強さ。

「……お父さん、名前、何がいいかな?」

息子に尋ねられ、仁は窓の外に舞う桜の花びらを見つめた。
かつて江戸で、自分を「おじいちゃん」と呼び、共に命の現場を駆け抜けた、あの勇敢な少女。
彼女がいたからこそ、自分は今、この平和な世界で生きている。

「……桜子。……桜子がいい」

「桜子? 綺麗な名前だね」

仁は、赤ん坊の頬にそっと触れた。

「桜子。お前は、孤独だった私を救い、歴史を繋いできた、とても強い女の子の名前なんだ。……今度は、この平和な時代で、お前の好きなように生きなさい」

赤ん坊が、ふっと笑ったような気がした。

その髪にはまだ何も飾られていなかったが、仁の目には、あの「桜の簪」が誇らしげに輝いているのが見えた。

時空を超えた絆は、名前という形を変えて、新しい未来へと受け継がれていく。
仁は、窓の外に広がる青い空に向かって、かつての仲間たちに心の中で語りかけました。

「……龍馬さん、恭太郎さん。……私は、幸せですよ。そして、桜子、咲さん…本当にありがとう」

それは、失ったものを嘆くのではなく、遺された命を愛し抜くという、一人の医師の物語の完結でした。


(完)
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