• テキストサイズ

時空の絆

第4章 時代を駆ける者


私は温かいスープを器に盛り、沖田さんに手渡した。

「これ、生姜が入ってるから体が温まります。卵も入ってるから、ちゃんと食べてくださいね」

沖田さんは、湯気が立つ器を両手で包み、一口、ゆっくりと口に運んだ。

「……ああ。温かい。…… 桜子さん、これは魔法の薬ですね。喉の痛みが、すうっと引いていく気がします」

「大げさですよ」

私が照れくさそうに笑うと、近くにいた隊士が冷やかしてきた。

「総司、顔が真っ赤だぞ。熱が上がったんじゃねえのか?」

「うるさいですよ。…… 桜子さん、本当に美味しい。ありがとうございます」

その時、一人の背の高い男がふらりと現れた。
整った顔立ちだが、その瞳は鋭く、周囲の空気を一瞬で引き締めるほどの威圧感がある。

「……総司。非番だからと、だらけすぎだ」

「おや、土方さん。そんなに怖い顔しないでくださいよ。これ、桜子さんが作ってくれたスープです。一口どうですか?」

土方歳三。
実物の「鬼の副長」を前に、私は息を呑んだ。

土方さんは私を一瞥し、それから沖田の持つ器を見つめた。

「……フン。そんな得体の知れぬものを食って、腹でも壊したらどうする」

そう吐き捨てるように言ったが、彼の目は、沖田の顔色が昨日よりも少しだけ良いことを、確かめるように見つめていた。

「……お嬢さん。こいつに、あまり変な知恵を吹き込まないでもらいたい」

土方さんはそう言い残して去って行ったが、その去り際、私には彼が少しだけ安堵したように見えた。

おじいちゃん、歴史の本には「冷酷」だなんて書いてあるけど、この人たちは、ただ必死に仲間を守ろうとしているだけなんだね。

私は、スープを飲み干して満足そうに笑う沖田さんの横顔を見ながら、この穏やかな空気が少しでも長く続くようにと、心の底から願わずにはいられなかった。


/ 88ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp