• テキストサイズ

時空の絆

第4章 時代を駆ける者



第二十話:仁の懸念


「……ただいま戻りました!」

橘家の門を潜った時、空はすっかり濃い紫に染まっていた。
玄関先には、行灯の明かりを背にした仁先生が、彫像のように立っていた。その表情は、私がこれまで見たことのないほど硬い。

「桜子さん。……遅いですよ。心配しました」

「ごめんなさい。つい、話し込んじゃって……。でも、すごく面白い人と知り合ったんです」

私は、おしるこ屋での楽しかった余韻のまま、不用意にもその名前を口にしてしまった。

「沖田総司さんっていう、新選組の人で。土方さんの俳句の話とか、近藤さんの失敗談とか……」

その瞬間、仁先生の顔から色が消えた。

「……新選組?」

先生は私の肩を強く掴み、奥の部屋へと促した。咲さんも、居間で心配そうに私たちを見つめている。

「桜子さん。……いいですか、よく聞いてください。新選組には、二度と関わってはいけません。彼らに近づくことも、ましてや親しく話すことも、これからは一切禁じます」

「えっ……どうして? 沖田さんはすごく優しかったし、悪い人には見えなかったよ」

「彼らが『良い人』かどうかを言っているんじゃない!」

仁先生が声を荒らげた。私は思わず肩を震わせる。
いつも穏やかな「おじいちゃん」が、こんなに厳しい声を出すなんて。

「彼らは、時代の仇花(あだばな)なんです。これから始まる激流の中で、最も凄惨な戦いに身を投じ、そして……敗れ去る運命にある。新選組に関わるということは、その『血の螺旋』に巻き込まれるということだ」

/ 88ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp