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時空の絆

第3章 修行


「ですが、桜子さん」

仁先生が真剣な顔で私に向き直った。その瞳には、並々ならぬ決意が宿っていた。

「私の周りが騒がしくなるのは、避けられないことかもしれません。君の持つ未来の知識や、その奇妙な言葉の数々は、欲深い人間にとっては喉から手が出るほど欲しい宝物でしょう。……でも、約束します。私は、君を政治や権力の道具にはさせない。君を巻き込むようなことは、決してしませんから」

「先生……」

その言葉に、私は心の底から安堵した。

私はただの女子高生で、歴史のヒーローになりたいわけじゃない。
誰かに利用されるのが怖くて、正体がバレるのが不安で……。でも、目の前のこの若き日の「おじいちゃん」だけは、何があっても私を守ってくれる。その確信が、私の震える心を支えてくれた。

「ありがとうございます。……私、先生の足手まといにならないよう、もっと勉強します。福田先生や多紀先生に、また何かあった時……私にも手伝わせてほしいから」

「ふふ、頼もしいですね。……では、今日の講義の続きです。次は循環器系……心臓の仕組みについて、君の知っている『未来の常識』と照らし合わせてみましょうか」

先生の優しい声に、仁友堂の午後の陽だまりが溶けていく。
しかし、仁先生がどれほど桜子を守ろうとしても、「未来の光」は隠しきれるものではなかった。

医学館の奥深く、多紀元琰のもとには、桜子が翻訳で見せた「神がかり的な知恵」の報告が、着実に届けられていたのである。

「……南方仁の弟子だと? 面白い。その娘、一度この目で確かめてみるとしよう」

多紀元琰の呟きが、静かな医学館の広間に冷たく響いた。

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