第3章 修行
「な、なんですか、この眩しさは! 行灯の百倍……いや、太陽の欠片を閉じ込めたようです!」
咲さんが目をしばたたかせながら驚愕している。
「これがあれば、夜間の手術も、喉の奥の観察も……影に邪魔されずに済む。桜子さん、これは……この時代における『無影灯』ですよ!」
仁先生が興奮気味にライトを握りしめる。
しかし、そのすぐ後に、鞄の奥から「医療」とは全く無縁なものが出てきた。
「…… 桜子さん。これは?」
咲さんが指差したのは、リップクリームとグロス、お菓子の「ラムネ」とグミ、そして……スマホだった。
「あ、それは……えっと、リップクリームとグロス、口に塗る保湿剤?みたいなもので、こっちはお菓子です。」
「この黒い板状のものは……? 」
「これは、文をやりとりしたり写真を撮ったりするのに使います。」
「携帯電話がこんな風になっているとは…」
仁先生が手のひらに収まる「スマホ」に本気で困惑している。
「……あ、このラムネ、食べますか? 甘いですよ」
一粒食べた咲さんは「まあ、とても美味ですね!」と目を丸くしていた。
「……コホン。失礼しました。とにかく、これらは江戸の命を救うための『聖遺物』です。桜子さん、これからはこれらを適切に使えるよう、まずは人体の構造から叩き込みますよ」
「……はい!」
厳しい修行の予感に身が引き締まると同時に、未来の品々が現実逃避したくなる私の心を少しだけシャキッとさせてくれた。
女子高生の日常品が、歴史を変える道具に変わる。
私の本当の戦いが、今、ここから始まった。