• テキストサイズ

時空の絆

第2章 八百八町



第九話:時代の体現者


「んー! おいしい……!」

私は、両手に持った醤油だんごを頬張った。

焼きたての香ばしい香りと、もちもちした食感。現代のコンビニで買うお団子も美味しいけれど、この「炭火で焼きました」という力強い味は、なんだか体の中に直接元気が染み込んでくる気がする。

「はっはあ! 桜子、ええ食いっぷりじゃ。江戸の味も悪くないろ?」

龍馬さんは自分の分を一気に口に放り込むと、道ゆく人々を眺めながら、不意に視線を遠くへやった。

活気に満ちた日本橋。
天秤棒を担いだ棒手振りが威勢よく声を上げ、色鮮やかな着物を着た娘たちが笑いさざめき、犬が走り回っている。

「…… 桜子。おまんは、この国をどう思う?」

団子を飲み込もうとした私の喉が、一瞬、止まった。
龍馬さんの声は、いつになく低く、真剣だった。

「……どう、って……」

「わしにはのう、この国が今、大きな波に呑まれようとしちょるように見えるがぜよ。古臭い皮を脱ぎ捨てて、新しい龍になろうとしちゅう。……おまんや先生の『故郷』はどうなっちょる? 」

私は、手に持った竹串を見つめた。

故郷…それはこの国の未来。

便利な機械に溢れ、病気で死ぬ人も少なくなった、私のいた時代。
けれど、私はそこで「自分はダメな人間だ」と悩み、息苦しさを感じていた。

「……とても豊かです。龍馬さんたちが驚くくらい。でも、みんなが幸せかって言われると、よく分からない。……便利になった分、みんな何かに急かされて、隣にいる人の顔も見ないで、小さな箱を眺めてばかりで」

私は顔を上げ、眩しい太陽を仰いだ。

「でも、おじいちゃん……南方先生は言っていました。この江戸の人たちは、みんな『今』を一生懸命に生きていたって。だからこそ、自分も必死になれたんだって。……私、さっきからこの街を歩いていて、みんなの熱気に圧倒されてます。私のいた故郷よりも、ずっと『生きてる』感じがする」


/ 84ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp