第1章 幕末への導標
第七話:坂本龍馬、現る
「南方先生! おるかえ! 坂本龍馬、参上ぜよ!」
夜の静寂をぶち破るような、地鳴りのような大声。
仁先生が「あちゃあ……」という顔をして立ち上がるのと同時に、障子が勢いよく開け放たれた。
「先生、夜分にすまんき……おんや?」
そこに立っていたのは、ボサボサの髪に、どこか人を食ったような不敵な笑みを浮かべた大男だった。
坂本龍馬。
歴史の教科書で見たあの男が、実物として目の前にいる。
龍馬さんの視線が、仁先生の隣に座る私に突き刺さった。
「……先生。そこのおなごは、一体誰ぜよ? 咲さんかと思えば、これまた……えらい別嬪さんじゃないかえ」
「あ、あの、彼女は……」
仁先生が言い淀む。私は、おじいちゃんから聞いた「龍馬さんは女好きだった」という話を思い出して、思わず身を引いた。
「龍馬さん、彼女は私の……」