第10章 有為転変
第59話:決意の再上洛
江戸に秋の冷たい風が吹き始めた頃、私たちは再び京の都へと向かっていました。
家茂公が最期に遺した二通の書状。一通は和宮様へ。そしてもう一通、新選組の近藤勇先生へ宛てられたものを、私はこの手で届けなければなりませんでした。
「……桜子さん、大丈夫ですか」
揺れる籠の中で、仁先生が心配そうに私を見つめていました。
「……はい。あの方が、命を懸けて守ろうとした『誠』の答えを、ちゃんと見届けたいんです」
京の町は、かつて訪れた時よりもさらに殺伐とした空気に包まれていました。薩長同盟の噂、そして将軍崩御の衝撃。倒幕の足音が、すぐそこまで迫っています。
西本願寺の新選組屯所。
重苦しい空気の中、近藤勇先生と土方歳三さんが、私の差し出した書状を食い入るように見つめていました。
「……これは、上様のご真筆……」
近藤先生の声が、微かに震えていました。
そこには、家茂公が死の間際に認めた、新選組への最後の言葉が記されていました。
『徳川のために血を流すのは、もうよい。これからは、新しい日本のために、その剣を、その志を使いなさい。其方らの誠は、余がすべて覚えている』