緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第4章 不実な夜に、君の名を
「遠慮して、物分かりのいいツラして、それで女一人壊して……。そんなもんが、お前のやりたい海賊か? 」
シャンクスの身体が、大きく震えた。
船長としての立場、彼女の将来を案じる「優しさ」
それら全てが、ただ自分の臆病さを隠すための言い訳に過ぎなかったのではないか。
「……俺は、あいつを……」
「行けよ。……今ならまだ間に合う。赤髪の名が泣くぞ、惚れた女一人、力ずくで奪い返せねェようじゃな」
ベックマンが手を離すと、シャンクスは一瞬だけ天を仰いだ。
朝日が眩しく、彼の赤い髪を鮮烈に照らし出す。
「……あぁ、そうだな。……俺が間違ってた」
シャンクスの瞳に、かつての鋭い光が戻った。
もはや、迷いはなかった。
船長としての判断でも、恩人としての義務でもない。
ただ一人の「男」として、彼女を失うことなど、到底許容できなかった。
「ベック、出航の準備をしておけ。……あいつを連れて戻るまで、船は一歩も動かすなよ!!」
シャンクスはそれだけ言い残すと、タラップを飛び降り彼女が消えた街の雑踏へと、弾丸のような勢いで駆け出していった。
街の喧騒は、朝だというのにどこか饐えた匂いが漂っている。
は、目的もなくふらふらと雑踏を歩いていた。
手元には一ベリーの金もないが不安はなかった。
絶望が深すぎると、人間はかえって楽観的になれるらしい。
(……いざとなったら……踊れば、いいんだわ)
かつて、名のある劇団で踊り子をしていた頃の術なら覚えている。
それに、もし客がそれ以上の「見返り」を求めてくるというのなら、今の自分にはそれを拒む理由も、守るべき矜持も残っていない。
昨夜、二人の男に散々暴かれ、他人の種を流し込まれたこの身体。
どうせ汚れているのなら、それを切り売りして生きていくのも悪くない。
シャンクスに拒まれ、居場所を失った自分には、それがお似合いの末路に思えた。
(小腹が空いたな……。誰か、パンの一つでもくれないかな)
ふと足を止め、壁に背を預けて天を仰ぐ。
眩しい朝日は、今の自分には毒でしかなかった。
「おや、お嬢ちゃん。奇遇じゃねェか」
聞き覚えのある、下卑た声。
が視線を下ろすと、そこには自分を朝まで弄び尽くしたあの二人の男が立っていた。