緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第7章 毒と蜜の独白
「なんだよお頭、元気ねェな! よし、代わりにお前が……」
ラッキー・ルウが楽しげにを標的にしようとした瞬間、隣から伸びてきた影がそれを制した。
「よしな、お前ら。……少し、顔色が普通じゃない」
ベックマンが、咥え煙草の先から静かに煙を吐き出した。
副船長の鋭い眼光に、クルーたちは「へいへい」と肩を竦めて散っていく。
二人きりになった甲板で、は張り詰めていた糸が切れたように、手すりに力なく寄りかかった。
「……ベックさん」
「……あいつ、何かしたか。いつもと様子が違ったようだが」
その落ち着いた声に促され、は昨夜、水を飲んでからシャンクスが豹変したこと、そして彼が口にした「真実」を、ぽつりと話し始めた。
山賊に攫われたあの日から抱えていた独占欲。
他の男への憎悪。
自分を想像して他の女で果てていたという羞恥極まる告白。
そして、自分自身もまた、その熱に浮かされてすべてをさらけ出してしまったこと。
「……彼は、何も覚えてないって言うんです。私だけが、あんなに重い言葉を全部持たされたまま……どうしたらいいか、分からなくて」
話し終える頃には、の瞳には微かな涙が浮かんでいた。
ベックマンは静かに煙草を足元で踏み消すと、空を見上げた。
「……あいつが飲まされたのは、おそらく自白剤の類だろうな。理性の壁を壊して、本音を無理やり引き出す類の毒のような薬だ」
「毒……」
「だがな、。薬は『無いもの』を作り出すことはできねェ。……あいつが言ったことは、あいつが血を吐くような思いで必死に押し殺してきた『本物』だ。忘れたふりをしているのか、本当に飛んでいるのかは知らねェが……」
ベックマンは一度言葉を切り、彼女の頭を大きな手で不器用に撫でた。
「……あいつが抱えていた毒を、お前が全部吸い出してやったんだ。そう思っておけ。あいつは今、人生で一番身軽な気分で寝てるはずだぜ」
その言葉に、は胸の奥が少しだけ軽くなるのを感じた。