緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第4章 不実な夜に、君の名を
不思議と涙は出なかった。
空っぽになった心には、朝日よりも冷たい虚無だけが居座っていた。
軽くシャワーを浴び、こびりついた男の匂いを洗い流す。
肌に刻まれた紅い痕は、どれほど擦っても消えなかった。
早朝の静まり返った港を歩き、レッド・フォース号へと戻る。
甲板に足を踏み入れた瞬間、背後から低く地を這うような声が響いた。
「……どこへ行ってた」
心臓が跳ねた。
振り向くと、そこには一睡もしていないのであろう顔をしたシャンクスが立っていた。
「……おはようございます、シャンクスさん。少し、散歩に……」
目を合わさず、逃げるように部屋へ向かおうとするが、シャンクスの右手が鉄枷のように彼女の細い腕を掴んだ。
「その跡は、なんだ」
「……っ」
彼の視線が、隠しきれなかった首筋の紅い痕を射抜く。
シャンクスの全身から、周囲の空気が震えるほどの凄まじい怒気が噴き出した。
「どこのどいつだ。……俺のクルーに手ェ出した落とし前、きっちりつけさせてやる。そいつらの居場所を言え」
床がミシリと音を立てる。
その怒りは彼女を守るための、正義に満ちたものだった。
……かつて、彼女が信じていた「大切」という名の光。
だが、は冷めた瞳で彼を見返し、掠れた声で言い放った。
「……無理矢理じゃありません」
「……何?」
「私から、ついて行ったんです。抱いて欲しくて、私がお願いしたんです」
シャンクスの動きが止まった。
掴んでいた腕の力が、一瞬だけ緩む。
信じられないものを見るような目で、彼は絶句した。
「……嘘だろ。お前、自分が何を言ってるか……」
「嘘じゃありません。二人の男の人に、朝までめちゃくちゃに抱いてもらいました。……シャンクスさんが、私を女として見てくれないから」
「……っ!!」
シャンクスが激昂し、彼女の肩を強く揺さぶった。
その瞳には、今までに見たこともないような激しい怒りと、そして隠しきれない絶望が混ざり合っていた。
「俺が、どんな思いでお前を……ッ! それを、どこの馬骨とも知れねェ奴らに、そんな風に……!」
「大切にしたいなら、どうして私じゃない、他の女の人を抱いたんですか? 」
弾けるように問い返したの言葉に、シャンクスは言葉を失った。