緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第2章 落日の蜜、始まりの鐘
「はい……ベックさん。私は、大丈夫です。でも、シャンクスさんが……」
「死にゃあしねェよ、あいつは。腕の一本くらい、明日には笑い話にしてるさ」
ベックマンは短くなった煙草を足元で踏み消すと、瞳の奥に微かな労わりを滲ませた。
「お前はもう部屋に戻って休め。一晩中、あんな連中に……。心身ともに限界のはずだ」
「嫌です」
きっぱりとした拒絶に、ベックマンは眉を上げた。
は自分の細い肩を抱きしめ、必死に言葉を絞り出す。
「離れたくないんです。私のせいで、あんなことに……。せめて、無事な顔を見るまでは」
彼女の瞳には、頑固なまでの決意が宿っていた。
ベックマンはそれ以上何も言わず、「好きにしろ」とだけ短く告げると、彼女の隣に腰を下ろした。
静寂が支配する廊下。
緊張の糸が切れたのか、あるいは一晩中繰り返された蹂躙による極限の疲労が押し寄せたのか、扉横に座り込んでいたのまぶたは次第に重くなり、意識は深い闇へと沈んでいった。
こっくりと、彼女の頭がベックマンの肩に落ちる。
ベックマンは規則正しくなった彼女の寝息を聞くと、そっとその身体を横抱きに抱え上げた。
「……ひどい有様だな」
手首に残る跡を見つめぽつりと独り言をこぼし、彼は彼女を船長室の柔らかなベッドへと運び、毛布を肩まで掛けた。
彼女を寝かせた後、ベックマンは再び医務室へと向かった。
扉を開けると、そこには手術を終え、蒼白な顔で眠りに就いているシャンクスの姿があった。
左肩には分厚い包帯が巻かれ、シーツにはまだ滲んだ血が紅い斑点を作っている。
「……終わったか」
「ああ、ベックか。……なんとか一命は取り留めたが、とんでもねェ無茶しやがる」
ホンゴウが汗を拭いながら椅子に深く腰掛けた。
ベックマンは無言でベッドの傍らに歩み寄り、戦友の眠る顔を眺めた。
「ルフィとはどうした」
「ルフィはマキノが連れて帰った。は……今、船長室で寝かせてきた。一晩中回されて、心も身体もボロボロだ」
「そうか……」
二人の間に重苦しい沈黙が流れる。
シャンクスが守り抜いたのは、幼い少年の未来と、絶望の淵から救い上げた一人の女の尊厳だった。
ベックマンは窓の外、静かに揺れる東の海の月明かりを見つめ、静かに息を吐いた。