緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第10章 花の誘惑
「………えっ?」
が我に返ったときには、もう遅かった。
開いた花の中心から蛇のようにのたうつ無数の蔓が飛び出し、一瞬にして彼女の身体を容赦なく絡め取った。
「――キャアアアアアッ!?」
「!!」
「シャンクスさん、助け……っ!」
叫び声は一瞬でかき消された。
蔓はの身体を強引に引きずり込み、大きな花弁がパチンと閉じて彼女を完全に飲み込んでしまったのだ。
「しまっ!……クソがっ!!」
シャンクスの目付きが一変する。
いつもの剽軽な男の顔は消え去り、凄まじい殺気が森の空気を震わせた。
彼は即座に腰の愛刀グリフォンの柄を握り締め、を救い出すために花へと跳躍した。
一太刀で叩き斬る――そう判断した瞬間。
シューーーーーッ!!!
花の頂点にある器官から、視界を覆い尽くすほどのドス黒い紫色の霧が噴射された。
「……っ!?」
並の海賊ならそのまま突っ込んで命を落としていただろう。
しかし、シャンクスの本能が最悪の危険を察知して彼の身体を強制的に制動させた。
シャンクスは空中で身を翻し、間一髪でその霧の範囲から飛び退く。
ポタ、と霧の雫が触れた地面の草木が一瞬で黒く腐り、ドロドロに溶けていく。
生物の肉体など触れればひとたまりもない、猛毒の霧だった。
「チッ……! 厄介な真似を……!」
花に近づけばこの毒霧を浴びて自分が無事では済まない。
また、強引に斬撃を飛ばして花を破壊すれば、中に囚われているまで巻き添えにしてしまう危険性があった。
植物の内部からは密閉されているせいでかすかにしか聞こえないが、助けを求める声が伝わってくる。
「おい、!! 聞こえるか! 今すぐ助けてやるからな!!」
覇気を纏わせた声で叫びながらもシャンクスはギリ、と奥歯を噛み締めた。
目の前のたかが一本の植物を前に、迂闊に近づけない。
危険すぎる霧と、中に囚われた愛しい恋人の安全の間で、シャンクスはかつてない焦燥感に駆られながら、どう攻略すべきか激しく思考を巡らせるのだった。