緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第10章 花の誘惑
「……あれ? すごく、いい匂い……」
船への帰り道、夜風に乗って漂ってきたその香りには思わず足を止めた。
それは、昼間に街で嗅いだどの花の蜜よりも甘く、脳の奥を直接痺れさせるような強烈にそそられる匂いだった。
「ん? どうした、」
「シャンクスさん、この匂い分かりませんか? すごく甘くて、美味しそうな…」
「匂い? いや、俺は何も感じねェけどな。いつもの花の匂いじゃねェのか?」
シャンクスは不思議そうに鼻を鳴らすが、本当に何も感じていない様子だったが、ほんのりとお酒が回っていたの頭は、その極上の香りにすっかり支配されてしまっていた。
そのため、完全に失念していたのだ。
昼間の買い物の途中で街の人から言われた、あの忠告を。
『お嬢さん、この島の夜の森にだけは近づいちゃダメだぜ。とんでもねェバケモノがいるからな』
「……シャンクスさん、少しだけ寄り道してもいいですか?すぐそこだと思うんです」
「おいおい、早く船に帰ってベッドに入りたいってのに……。まぁ、お前がそこまで言うなら付き合うよ」
繋いだ手を引かれるまま、シャンクスは苦笑して彼女の後に続いた。
道を逸れ、薄暗い夜の森へと足を踏み入れる。
進めば進むほど匂いは強くなり、の足取りはまるで何かに操られるように早くなっていった。
森の開けた場所に、それはあった。
「……これ、は……?」
そこに鎮座していたのは、見たこともないほど巨大な植物の蕾だった。
月の光を浴びるその姿はどす黒い赤色と禍々しい斑点模様に彩られ、お世辞にも美しいとは言えないどこか毒々しい見た目をしている。
――なのに、そこから放たれる香りだけは気絶しそうなほど甘く、の理性を狂わせた。
(もっと、近くで、嗅ぎたい……)
「おい、! 待て、そいつは怪しすぎる。離れろ!」
後ろからシャンクスが鋭い声をかけるが、香りに完全に魅了されてしまったは自らシャンクスの手をすり抜け、ふらふらと巨大な蕾へと近づいていった。
一瞬の出来事だった。
ーーぐわッ!!
地響きと共に、毒々しい蕾がグワリと大口を開けるように割れたーー。