緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第1章 甘露に溺れる地獄
「……よせ、。謝る必要なんてねェよ。こいつはいつものことだ。昨日お前を助けた祝いだなんだと言い訳して、朝まで飲み倒してただけだ」
「えっ……?」
「気を遣わせたんじゃねェ。単に酒が大好きなバカなだけだ。ほら、お頭、いつまでも転がってねェで起きろ」
ベックマンがシャンクスの脇腹を軽く蹴飛ばす。
シャンクスは「いてて……」と情けない声を上げながら、なんとか這い上がった。
昨日までの「救世主」のイメージが、音を立てて崩れていく。
だが、そのあまりにも人間臭く、欲に忠実で(ただしそれは酒欲だったが)自分を「女」としてではなく一人の「居候」として放置してくれる空気感に、の心は不思議と軽くなっていた。
「……ふふっ」
一ヶ月ぶりに、彼女の唇から小さな、乾いた笑みがこぼれた。
かつての地獄が、まるで悪夢だったかのように、赤髪海賊団の日常は賑やかで、そしてどこまでも健康的だった。
「おい、! 今日のシチューはコックの自信作だ、冷めねェうちに食えよ!」
ラッキー・ルウが巨大な骨付き肉を頬張りながら、豪快に笑いかける。
最初は、男たちが声を張り上げるだけで肩を震わせていただったが、今ではその騒々しさが心地よいBGMに変わりつつあった。
シャンクスの言葉通り、彼らは彼女を「女」として見ることはなかった。
もちろん、元々が美しい踊り子である彼女に見惚れる瞬間はあるが、その視線には湿り気も卑猥な粘り気もなかった。
ただ、一人の仲間として、あるいは守るべき「家族」として接する、カラッとした陽気さ。
「ふふ、コックさん、今日も美味しそうです。お手伝いすること、ありますか?」
がエプロンを締め、台所に顔を出す。
その声に、厨房にいた男たちが一斉に顔を綻ばせた。
「おう、助かるぜ! じゃあ、その野菜を刻んでくれるか?」
彼女が楽しそうに笑い、包丁を握る。
その横顔を、シャンクスは少し離れた特等席で、酒瓶を片手に見守っていた。