第2章 その御身、夜に化ける
違和感を感じて少しずつ覚醒していく。玄の腕の中で、身体の温度が上がっていく。耳に牙が刺さり、艶めかしい声が漏れた。
玄の腕……ふわふわとした柔らかさが感じられない。目を開け、玄を見上げる。でもそこにいたのは、玄ではなかった。
翡翠の瞳は玄と同じ……だが、白い肌に艶々と流れる黒髪。頭には玄と同じ大きな耳。腰には確かに、玄の柔らかい毛の感触がある。
「起きたか。ならば――其方の純潔を我に捧げよ」
スーッと通った鼻筋に、大きな犬歯が覗く薄い唇。
「……誰?」
「……何故わからない」
むすっと軽く唇を尖らせ、目を背ける。白い頬に指を這わせ、その顔を見つめた。声も瞳も、包む温かさも知っている。
「玄……?」
すぐに視線は戻り、薄く笑みを浮かべながら近付いてくる、怖いほどに整った顔。逃げることも出来ずに固まっていると、少し湿った唇が柔らかく重なった。