第2章 その御身、夜に化ける
ぽつぽつと珠が頬に当たり始めて、薄鈍色にくすんだ空を見上げる。玄の、漆黒の絹のような毛が濡れてしまう。羽織りを脱ぎ、ピンと立った耳が隠れぬよう被せて抱きつく。
玄は洞穴に滑り込み、私を降ろしてぶるぶると震える。水飛沫が全て私にかかった。睨むでもなく、ただジーッと玄を見つめた。
「何をしておる。濡れた服を脱げ」
洞穴の端と端に杭を打ち、麻紐で繋ぐ。そこに服を脱いで掛けた。枯葉や枯草を集め、火を熾す。枝などを焚べていくと、洞穴内が照らされ、雨で濡れて冷えた身体が温まっていく。
火の前に膝を抱えて腕を擦る私の背に、濡鴉のような黒が寄り添った。私の腰を包むように横になり、薄目で私を見上げ閉じる。
そんな玄の懐で丸まって目を閉じた。私よりも温かい体温を感じながら、ゆっくりと微睡みに落ちていった。