第2章 その御身、夜に化ける
梓弓をしならせ、鋭利な矢を射った。
八咫烏――天照大御神の使いか。すでに私の居所は最高神にはお見通しのようだ。
黒い羽毛に覆われた腹に、矢尻が突き刺さる。天で羽を羽ばたかせていた烏は、そのまま地に落ちた。
黒狐が木の幹に爪を突き刺し駆け上がる。地を歩く狐が、空を飛ぶ烏を噛み殺した。その黒い肉に、鋭い牙が突き刺さる。ぶるぶると首を振って投げ飛ばす。
「不味い……梓、今宵――其方を食わせろ」
主に向ける言葉だとは到底思えないが、傲慢で言葉を選ぶことが出来ないこの黒狐が――玄だ。あの日、私を助けてくれたあの玄。
「……食い殺すの?その牙で……」
「阿呆なのか?我はいつまでも其方と共に在る」
玄の言葉が訳がわからず、首を傾げる。私の血肉を食らって、私を"玄の一部"にするということだろうか。
数羽の八咫烏を射落とし、木々の隙間を走り抜ける。「遅い」と言われ、玄の背中に乗って、木漏れ日が落ちる森を駆け抜けた。