第4章 荒神を鎮めん
玄を子狐の姿に戻らせ、少し経ってから路地裏から出ていく。出た直後、風が髪を靡かせた。少し違和感を感じた気がしたが、家屋の隙間から出た直後だからだと思い、気にせず町を歩く。
「きな臭いな」
靡いた髪から顔を出し、呟いた玄に視線を向ける。気のせいではなかったか。肩の子狐が空を睨んだ。
「風神……志那都比古神か」
私も玄の視線を追って空を見上げる。背中に吹き付ける風が、どんどん強さを増していった。伊邪那岐と伊邪那美の間に生まれた1柱が、荒ぶっている。
すると、空が雷雲に覆われ、鈍色よりも濃い紺鼠に沈んでいた。雷が鳴る様は、まるで――天が怒っているようだ。
「グルルル……我が主、我の背に乗るのだ」
「え、ちょ……見られ……」
突然、元の黒狐の姿に戻った玄を見て、慌てて辺りを見渡す。店仕舞いや慌てて家路に入る人たちは、玄の姿など気にしていなかった。
すぐに玄の背中に乗り、軽く毛を掴む。一気に町を走り抜けていく彼は、淀んだ空を睨んでいた。