第4章 荒神を鎮めん
あれから数日経ち、京の町を歩いている。そろそろ宿で休みたいものだ。子狐に化けた玄が私の肩でクーンと高い声で鳴き、甘えるように頬に口付ける。
人里に下りる時もこうしてついてくるようになった。妖狸の件が余っ程嫌だったようだ。
「ちょ……玄、擽ったいよ。ふふっ」
頬を舐め始めた玄は、そのまま耳や首筋まで舐める。子狐の姿だからって、何をしても良いと思わないで欲しい。
「愛おしい梓よ。早う夜ならぬか……いじらしい其方を愛でたい」
「玄、喋っちゃダメだよ……」
「聞こえておらぬ。其方の耳だけに届けておるからの」
玄の言葉に頬を火照らせていると、「其処に入れ」と顎で路地裏を示される。訳が分からぬまま従い、路地裏に入っていくと、家屋の陰の中、肩から飛び降りた玄から青白い光が放たれた。
目の前で人に化けた玄に呆気に取られる。どうしてこんなところで……背後で足音が聞こえ、慌てて玄の頭に手を伸ばした。ピンッと立った狐耳を押さえつけるように隠す。
玄は私の腰を抱き寄せ、上を向いている唇に自身のそれを重ねた。誰かわからないけど、見られてしまう。だが、耳から手を離して引き剥がすことは出来ない。
「……行ったか。
誰のものを狙っておるのか……人というのは、卑しいものだな」
「玄は言えないよ!こんなとこで何するの……」
顔を逸らして僅かに頬を膨らませた玄。「虫がいたから……」とボソボソと何か言っている。小さすぎて何を言ってるか、聞き取れなかった。