第3章 妖狸の惑わし
結局、昨夜と同じ洞穴に入り、火を熾す。玄とここで……否応にも思い出してしまう。玄の温度が忘れられない。"もう一度"と言っていたのは、今夜なのだろうか……。
焚き火の前で冷えた身体を温めていると、玄が隣に横になり、顎で膝を下ろされる。抱えていた膝を下ろし、正座を崩して座った。
太腿に顎が乗り、目を閉じる玄の毛並みを撫でる。切長の目を細めた玄を見つめていると、あの美男子の顔が浮かんでしまう。妖によって化ける姿は違うのだろうか?妖狸はもっと幼く愛らしい姿だった。
「梓よ。我が心も読めることを忘れておらぬか?
……他の男を考えるのはやめよ」
「なっ……読まないで!そんなに妬くのはやめてよ……」
起き上がったかと思うと、膝に前足を乗せ、長い鼻先で唇に触れる。頬まで噛み、舌を捩じ込んでくる。黒狐のままでこんなこと……胸を押しても離れてくれない。
舌が絡み、そのまま後ろに倒される。腕を押さえるように前足を置き、私の上で伏せた。人よりも長い舌が私の口内を貪り離れていく。頭が霞み、ボーッと玄を見つめた。
「このまましてみるか?
其方はあの美男子がお好みのようだがな」
「……玄、自分にも妬いてるの?」
「何故そうなるのだ。言ってみただけだ。誠にするわけがなかろう」
立ち上がった玄は私が起き上がるのを待ち、また膝の上に顎を乗せ、目を瞑った。本当に寝るわけではないだろうが、ここが気に入ったらしい。その姿があまりにも愛らしく、撫で倒してしまっていた。