第3章 妖狸の惑わし
目の前の男は蔑むように笑い始める。
「化け狐だとも知らず、交合ったのかい?既に巫女など出来ぬのでは?」
肩に触れるまでもない赤錆の髪が、市女笠の上から僅かに覗く。くりりとした涅色の瞳に、常に上がっている口角。近くで見ると、麗しいと言うより……愛らしい。
上がり始めた雨に気付き、市女笠を取り、男を見上げる。睨むように眉を寄せた。
「可憐な少女だったとは……私が匂いを消してあげようか?」
「あら、どのようにして?」
にこやかに微笑む男は「こちらに……」と背を向けて歩いていく。後をついていくと、町外れの小屋のような民家に入っていった。