第4章 ないものねだり*💙
「はぁ…
……好きだよ」
小さく息を吐いて初めて樹から好きって言われた。いつもの低くて、掠れた声。ずっと欲しかった言葉。
だけど、
「好きなんだから名前なんかなくてもいいだろ」
あぁ…そっか。そうやってまた逃げられる。責任は取ってくれないんだね。
でも、好きだよって言うんだね。
涙が滲んでいくのがわかる。震える声で言うのが精一杯。
「ずるいよ」
一瞬、本当に一瞬だけ、樹は今まで見たことのない顔をしてた。
たぶん、今ならまだドアを開けて帰れる。こんな苦しい思いをしないちゃんとした未来を選べる。
わかってる。わかってるのに。
苦しい。でも、それ以上に――好き。