第4章 ないものねだり*💙
自分でも止められない。
樹の服の襟を軽く掴んで背伸びをする。怒りも悔しさも惨めさもぶつけるみたいにキスは私からした。
次の瞬間、腰を強く引き寄せられる。
キスが深くなって息が混ざる。指が絡む。逃げ道がなくなる。
「バカだな」
キスの合間、掠れた声。
そうだよ、バカだよ。でもそれは樹もでしょ。言い返す合間もなく繰り返しキスをしてくる。
さっきより少しだけ必死な抱きしめ方。それが嬉しい自分がいる。
最低だ、わかってる。
この関係の名前はない、未来もない。
でも腕の中にいるとすべてがどうでも良くなる。
好きだから。
“逃げるなら、今だったのに”
そう思いながら、
もう一度、唇を重ねた。
end.