第4章 ないものねだり*💙
そう言って樹の腕を抜ける。
樹は追わない。ただソファに座ったまま見てる。そういう人だって知ってる。
どうせ戻ってくんだろ?って顔してるんでしょ。
バッグを掴んで、靴を履く。少し震える手でドアノブに触れる。
まだ、何も言ってこない。本当に引き止めてくれないんだ。本当にこれでさよならだね。
「じゃあね」
振り向かずに言ってドアを開ける。
一歩、外に出たその瞬間。
手首を強く掴まれる。
「……待て」
さっきまでと温度の違う、低い声。
振り返ると、さっきの余裕が少しだけ消えてる。掴む力が、いつもよりほんの少し強い。
「本気?」
「帰る」
言い切ると樹は言葉を探すみたいに黙る。それでもすぐに強がる。
「へぇ。お前にできんの?」