第4章 ないものねだり*💙
「もう、やめたい」
空気が止まる。樹の手も止まる。
ゆっくり顔を上げて、聞かれる。
「何を?」
「こういうの」
わかってるくせに。
言葉にした瞬間、胸が痛む。本当はやめたくない。でも、このままじゃもっと苦しくなるってわかってる。
「急にどうした」
声は低いけど怒ってない。だけど本気にも聞こえない。それが余計に辛い。
「……私ばっか好きみたいで、やだ」
初めて本音が零れる。
彼は少しだけ目を細めたけどすぐいつもの余裕の笑みで笑う。
「今さら?」
いつもと同じ台詞を逃げ場を塞ぐみたいに言う。
「今さらだよ」
涙は流さないで淡々と、泣いたら負けな気がするから。
「じゃあやめる?」
試すみたいな軽い声。本気で止める気はなさそう。心が静かに折れる。
「……うん」