第4章 愛の影
〜おんりー目線〜
アジトの中は大宴会だった。男も女も、上司も部下も、関係なく飲んだくれては酔い潰れて。
ここは、愛が禁じられている世界とはかけ離れている程、周りの人間はよく笑い、よく泣いた。なぜなら俺たちは盗賊で、ルールを破ることが当然だったからだ。
「おい、おんりー! お前は飲まないのか?」
盗賊のお頭(かしら)が突っ立ったままの俺に声を掛けてきた。俺は一言、飲まないとだけ答えて宴会から離れる。
どこかの偉い貴族から奪った宝物が思った以上に数があり、俺はそれらのほとんどを仲間の盗賊たちに山分けした。
すると途端に、今日は宴会だと騒ぎ出し、今日も豊かに生きていることを喜び合う。そんなことばかりしているのが、俺たち盗賊だった。
俺は人気のないところまで行き、誰にも尾行されていないことを確認すると、こっそりと持ち出した金貨数枚と一つのネックレスを懐から取り出した。
これだけで充分。充分なのだ。
俺は長い間すっかり身についたスキルで、とある街の夜に滑り込んだ。街はみんな夜まで出歩いたり働いて明かりが点いているのに、路地裏まで進めばすっかり暗い。きっと、全ての世界にある暗いものをここに持ち込んだんじゃないかというくらい。
「あ、おんりーちゃんだ!」
「おんりーお兄ちゃん!」
そこに来ると子どもが何人かやって来た。子どもは皆体が細く、擦り切れた服を何度も使い回している様子だった。
「今回はこれ持ってきたから、いつものところで換金して、ご飯食べるんだよ」
俺はしゃがんで子どもたちにくすねた金貨を渡す。こんなことに意味があるかなんてよく考えたことはないが、ゴミ箱を漁って今日のご飯を探しているよりは、マシだと思う。
「ありがとう、おんりーちゃん!」
子どもたちはにこやかに笑ってお礼を言う。この子どもたちは大人に見離されているから知らないのだ。笑うことすら禁じられている世界のことを。
「じゃあまた」
だけどこの時は、俺も笑うことがどういうことなのか知らなかった。ただ淡々と生きていけばいい。目的を持つことが、無意味だとすら思っていたからだ。