第3章 愛の切れ端
そう俺が言ったのも束の間、きおきおはバランスを崩して平均台から落ちてしまい……と思いきや、背筋を伸ばしてその場に立ち、ポーズを取ってみせたのだ。
「ふ〜、危ない危ない!」
明らかに焦っていたかのように汗を拭うきおきお。だが、観客たちの子どもは大喝采だ。
「おおー!」
「兄ちゃんカッコイイー!」
パチパチと小さな拍手が起こる中、俺も自然と両手を叩いていた。
こんなに心が揺れ動いたのは初めてだった。
「わざとじゃないんだけどね? まぁ、喜んでもらえるならいっか!」
ときおきおも笑っていて、本当に和やかなシーンだった。
「あそこです。あそこに、子どもたちによくないことを教えている大人がいます」
その時、誰か大人が軍兵を呼んだ。当時この世界では、子どもは遊ぶことを禁じられ、その遊びを教える大人は重罪として監獄に捕らわれるのがごく当たり前の決まりだった。
「やべ、軍兵だ! おい、たいたい、MEN、逃げるぞ!」
そうして緑顔をしたストリートパフォーマーとそのスタッフたちはあっという間にどこかへと逃げ去った。
(世知辛い世の中だな……)
なんて他人事みたいに思っていると、駆けつけた軍兵がちらりと俺の方を向いた。俺は思わずビクリと肩を跳ねさせてしまう。
「お前、どこかで見たことがあるな……?」
「……」
と軍兵に声を掛けられ、俺は少し考えたが。
「き、気のせいじゃないですかっ?」
じゃあ俺はこれで、と妙に早口で返しながら俺はさっさとこの場を去った。なぜか俺も軍兵に目をつけられている一人だった。早く逃げないと、監獄に送られちまう!