第2章 きっかけ
その後、僕はどうやって生きてきたか覚えていない。
ただ、家族には「医者になるのを辞める」だけ言って家を出、とある街でストリートイラストレーターをしていたヒカックさんに誘われ、一緒に芸術関係のバイトをしてなんとか生きていたことだけは覚えてる。
そこで僕は、この世界に失われている「愛」に気づいた。
「確かに、僕もこの世界のことは変だなとは思っていました。だけど、その原因が愛とは知らなかったです」
とヒカックさんも言っていたけれど、愛のない世界で煌びやかなイラストを生み出す彼は、すでに愛を自覚している一人の人間のように見えた。
「何かしなきゃいけないんだ……何か、みんな誰もが注目するような……こう、派手なやつを……」
僕はこの気持ちを何に言い換えたらいいか分からないまま、ヒカックさんが丁度壁に描いていた絵に目が向いた。そこには赤と白の派手な帽子を被ったピエロが描かれていて、手からはあり得ない程大きな花火が飛び出していた。
それで僕は、思いついたのだ。
「これだよ、ヒカックさん!」
「え……?」
「ありがとう、ヒカックさん! 僕、いいこと思いついたよ!」
「え、あ、ちょっと、ドズルさん! どこ行くんですか?!」
そうして僕が「サーカス団」を立ち上がることにしたのは、言うまでもないだろう。