第6章 自由な匠
と名乗ったところ、赤パン半裸の男がドズル、サングラスを掛けたのがぼんじゅうるというらしい。
(とはいえ半裸なのはなんでなんだ?)
まず目を引いたのはドズルという男の格好だ。ここは別にそんなに暑くもないのに、と思っていると、横にいるサングラスの男が重そうにレンガを数枚運んできた。
何をするのだろう……と俺は観客たちと同じようにドズルの次の行動を待った。間もなくレンガの山はドズルの前に運び込まれ、次の瞬間、彼は何か構えをして拳を振り下ろしたのだ。
「おぉ」
俺は思わず声をあげた。ドズルが数枚のレンガを拳一つで真っ二つにしたからだ。
(まぁあんだけ筋肉あれば出来るだろうが……)
ドズルの剥き出された筋肉は誰が見ても立派なものだろう。だがそれより驚いたのは、観客たちも俺と同じく反応を見せたことだった。
(観客たちもビックリしてた、よな?)
俺は子どもの頃から、周りの人間は白か黒なのだと思っていた。
というのは、俺の周りには淡々と勉強をしたり作業とかを続けたりするばかりだったから。
だから俺はいつからか、白という色を持つ幼なじみばかりつるんでいたのかもしれない。
アイツは白の中に色んな色を入れる。それは消えたり変わったりして、俺はそれが面白いと思っていたのだ。
当時は知らなかった言葉でいうと「感動」という奴だった。
やがてステージ上にいるぼんじゅうるが、積み上げたレンガの一枚に色味の悪い何かをこっそり乗せた。それを普通のレンガの下に隠し、ドズルにもう一度割ってみせよと言い出す。
何言ってんだあのグラサンは、と思っている内に、卑怯だぞ、と言い出す観客がチラホラいて。それに気づいたグラサンが、今まさにレンガを割ろうとしたドズルを止めて色味の悪い何かを取り出した。
それからグラサンはドズルにあからさまに大袈裟に怒られるのだが、それがなんだか可笑しくて俺は気づいたら笑っていた。それが「愛」の成し得るものだと知るのは、まだもう少しあとのことだ。