第4章 アフレッタンドに駆り立てられる【もう一度〜死滅回游について】
『私には結界術があったから、進化後もこうして形と理性を保てている。だが、もし人類が進化し、そのうちの一人でも暴走を始めたら、世界は終わりだ』
「――なぜ?」
己の手を見つめる天元へ、九十九が目を細めた。
『個としての境界がないんだ。悪意の伝播は一瞬さ』
一億人分の穢れが世界に流れ出て、先の東京が世界で再現されることになる。
「何のためにそんなことすんだよ」
怒りを押し殺して虎杖が尋ねると、天元は淡々とした声音で『さぁね』と返してきた。
『これも言っただろう。私には人の心までは分からない』
「でも、それって天元様が同化を拒否すればいいだけじゃないっスか?」
真希が言うと、『そこが問題なんだ』と天元は唸るように言って続ける。
『進化を果たした今の私は、組成としては人間よりも呪霊に近い』
「え……それって……」
緊張した声音で、詞織が夜色の瞳を揺らした。
『――そう。私は呪霊操術の術式対象だ』
二度目の衝撃――それは先ほど、羂索の目的を聞いたときよりも遙かに大きく、全員が愕然とした様子で息を呑む。
『羂索の術師としての実力を考慮すると、接触した時点で取り込まれるかもしれない。だから、私の本体は今、【薨星宮】で全てを拒絶している』
「その上で護衛を?」
星也に『あぁ』と天元が頷いた。
羂索は天元に次ぐ結界術の使い手であり、【薨星宮】の封印もいつ解かれるか分からないとのことだ。
「なぜ、今なんだ?」
【星漿体】との同化を阻止、天元を進化させ、【呪霊操術】で取り込み 操る。羂索は宿儺とも関わりがあるようだった。
確かに九十九の言う通り、渋谷での最後、羂索は明らかに虎杖を通して宿儺に語りかけていた。ならば、少なくとも千年 術師をやっている計算になる。
「なぜ! 今なんだ⁉」
キツい口調で問いただす九十九に、天元は目を揺らすことなく、どこまでも静かだった。