第4章 アフレッタンドに駆り立てられる【もう一度〜死滅回游について】
「津美紀……」
星也が顔を俯け、奥歯を噛み締めた。伏黒の表情にも焦りが滲み、詞織も泣くのを堪えるように唇を引き結んでいる。
「戻りましょう。津美紀さんには時間がない」
星也に声を掛け、乙骨が一同を促した――そのとき。
『――帰るのか?』
突然の声に、全員が一斉に声の主を振り返ると、その人物は『初めまして』と静かに発する。
『【禪院の子】、【道真の血】、【晴明の末端】、【呪胎九相図】、そして――【宿儺の器】』
声を掛けてきた存在は、おおよそ人間とは呼べない異形の姿をしていた。頭部は円柱で二対の眼を持ち、簡素な服を身に纏っている。
コイツが……この人が……天元‼
高専に向かう途中で天元について話は聞いた。高専各校 呪術界の拠点となる結界、補助監督の結界術の全ての強度を底上げしている呪術界の基底だ。
「アタシには挨拶ナシかい? 天元」
九十九の言葉に虎杖は天元の言葉を反芻し、確かに九十九に触れていないことに気づいた。
『君は初対面じゃないだろう、九十九 由基』
初対面じゃない? そういえば……この人だけは天元を呼び捨てにしている。どういう関係なんだろう。
「……なぜ、【薨星宮】を閉じた?」
『羂索(けんじゃく)に君が同調していることを警戒した。私には人の心までは分からないのでね』
「――羂索?」
聞き慣れない単語に九十九が眉を寄せる。