第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「いい、の……?」
「俺は悠仁の兄で、オマエは悠仁の仲間。ならば殺しはしない。壊相と血塗に対して申し訳なく思ってくれているのなら、それでいい」
殺したいほど憎いはずなのに……どれほどの想いを呑み込んでくれたのだろう。そう思うと申し訳なさが募る。
それでも、彼の情の深さを知って安心した。星也は『“今は”味方』と表現したが、この人はきっと虎杖を裏切らない。“大丈夫な人”だ。
そう分かって、詞織の口元は弧を描く。
「ありがとう、脹相」
自然と笑みを浮かべると、脹相は軽く目を見開き、肩に触れてきた。
「え……何……?」
「さぁ……何だろうな、この妙な庇護欲は。悠仁に感じるものとは違うが……」
そこで一度 言葉を区切り、少し顔を近づけてくる脹相に思わず身を引くと、伏黒が「おい」と言いながら大股で近づいてくる。グッと腰を引き寄せられるも、脹相は構わず続けた。
「神ノ原 詞織だったな。一度、『お兄ちゃん』と呼んでくれないか」
「え……ヤだけど」
呼ぶ理由もないし。きっぱりと断ると脹相はガックリと肩を落とす。
「脹相、詞織は僕の妹だ。君にはやれないよ」
「そうか。では、諦めよう」
そこは兄同士で通じ合ったのか。星也に言われ、彼はすぐに引き下がった。