第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「……脹相」
乙骨がその場を離れ、虎杖が星也と話をしている頃……詞織はおずおずと脹相を呼んだ。
「何だ?」
伏黒並みの仏頂面。怯みそうになるのは、彼に対して後ろめたさを感じているからだろう。
伏黒には「ついて来なくていい」と言ったから、少し離れた位置でこちらを見ている。
「悠仁を助けてくれて、ありがとう。あと……」
グッと息を詰め、詞織は勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい。あなたの弟たちを……殺してしまったこと」
八十八橋で戦った二人が、【呪胎九相図】と呼ばれる呪物の受肉体だったことは五条から聞いている。
彼が【九相図】の一番なら、自分たちが殺してしまった二人は彼の弟。
今も彼と敵対関係にあるのなら、謝罪は不要かもしれない。互いに殺し合うのだ。仮に死んだのが自分だったとしても恨むのは筋違い。
けれど 味方なら……黙って気づかないふりなんてできない。
「死んだ命は還らない。謝って済む話じゃないのも分かってる。赦してほしいなんて言わない。でも……謝らせてほしい。今 ここにいない二人の分も」
頭を下げる詞織を見つめ、不意に脹相はゆっくりと口を開いた。
「……謝罪を受け入れよう」
「え……?」
思わぬ返事に詞織は頭を上げ、高い位置にある脹相を見上げる。その瞳からは感じられるのは死んだ弟たちへの憐憫だけで、怒りや憎悪は窺えなかった。