第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「亡骸でも六人も揃えば、俺の術式の副次効果で気配くらいは分かるはずだ」
「分かった。じゃあ、僕は九十九さんに連絡してくるよ。少し待ってて」
そう言って乙骨が席を外した。
虎杖は枕代わりになっていたパーカーを着込み、「ありがとう、星也さん」と掛けてくれていたコートを返す。
すると、星也は虎杖の顔をジッと見て、悲しげに目を伏せ、頭を下げた。
「すまなかった、悠仁。必要な演技とはいえ、君には酷い物言いをしてしまった」
「いや、いいよ。そのおかげで助かった……わけ、だし……」
けれど、笑みを見せることはできず、虎杖の顔は無意識に俯いていく。
「……ねぇ、星也さん……一つ、教えて欲しいんだけど……」
そう前置きをすると、星也は無言で先を促してくれた。
「……俺は……たくさん、人を殺した……それでも、俺は……俺はまだ……呪術師で、いても……」
その言葉の先を続けられず、虎杖は唇を噛む。
「さっき憂太も言っていたが、悠仁のせいじゃ……」
星也が肩に触れてくれるが、虎杖は左右に首を振った。それを見て、彼は小さく息を吐く。
「……失われた命が還ってこないように、償えない罪は確かにある」
それでも 立ち止まることなく前を向き、奪った命と向き合いながら、より多くの命を守るために死力を尽くす。その覚悟があるなら……。
そこで言葉を切り、星也は「悠仁」と静かな声音で名前を呼ぶ。それに顔を上げると、吸い込まれそうなほど綺麗な夜色の瞳と目が合った。
「君が呪術師でありたいと願うなら、君は呪術師だよ――“あのとき”も今も……それは変わらない」
――「……悠仁。君はもう、呪術師なんだ」
覚えて、いてくれたのか……。
目頭が熱くなり、息が詰まりそうになるほど込み上げてくる感情を隠すように、虎杖は星也の胸に額を預けた。
そんな虎杖を受け入れ、彼は優しく頭に触れる。そこへ、乙骨が九十九との電話を終えて戻ってくる気配を感じた。