第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「野薔薇は……姉さまとショーコさんが手を尽くしてる。わたしたちが様子を見に行った時点で、蘇生には成功してた。でも、意識が戻るかは分からない。このまま意識が戻らない可能性も充分にあるって……」
「……そうか……分かった」
分かった、ともう一度 繰り返し、虎杖は拳を強く握った。
大丈夫だ。
一縷でも望みがあるのなら……まだ、悲しむのは早い。
「その“隠す”結界とやら、何とかなるかもしれんぞ」
突如 ヌッと現れた脹相に、伏黒がビクッと身を引く。
「だ、誰……?」
警戒するように詞織も伏黒の腕を掴んで身を隠していた。
「悠仁のお兄ちゃんだ」
「お兄、ちゃん……?」
「あぁ。アンタが虎杖の兄貴(自称)か」
話は聞いていたのか。伏黒と詞織が頷く。
「詞織、恵。彼は【九相図】の一番、脹相。“今は”味方ということで問題ないだろう」
「【九相図】……」
詞織がポツリと呟き、顔を俯けた。おそらく、八十八橋のことを思い出しているのだろう。
「で……どういうことだよ、脹相」
「以前 真人が【宿儺の指】と俺たち【呪胎九相図】を盗み出しただろう。それと同じことをする」
扉から【薨星宮】の途中には、高専が呪具や呪物を保管している忌庫があり、そこには脹相の弟である膿爛相(のうらんそう)、青瘀相(しょうおそう)、噉相(たんそう)、散相(さんそう)、骨相(こつそう)、焼相(しょうそう)の亡骸がある。