第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「俺たちは正義の味方じゃない。呪術師だ」
自分たちを本当の意味で裁ける人間はいない。だからこそ、自分たちは存在意義を示し続けなきゃならない。
もう自分たちに自分のことを考えている暇はないのだ。
――ただひたすらに人を助けろ。
伏黒の言葉に続け、詞織が「ユージ」と呼びかけてきた。
「そもそも人助けは、ユージの行動原理だったはずでしょ?」
澄んだ夜色の瞳が真っ直ぐに虎杖を映し出す。
けれど、虎杖は内心で「違う」と首を振り続けた。
――それじゃオマエらは……俺が隣にいる限り、ずっと苦しみ続けることになるんだぞ……!
「虎杖」
「ユージ」
ハモった二人が視線を交わし、詞織が瞼を伏せる。
「まずは俺たちを助けろ」
加茂 憲倫が仕組んだ、呪術を与えられた者たちの殺し合い――【死滅回游】。
それに伏黒の姉であり、詞織の幼なじみでもある津美紀が巻き込まれている。
「頼む、虎杖。オマエの力が必要だ」
「俺の……」
そう呟いたのと同時に、自分の手を握る詞織の手が震えていることにようやく気がついた。
「お願い、ユージ。津美紀を助けたいの」
深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
――人を助けろ。
耳の奥で、祖父の言葉が蘇った。その言葉は虎杖がブラしたくない、信念そのもの。
そうだ。そうだったな。
虎杖は詞織の手を握り返した。そして、伏黒と詞織に視線を返すと、次いで沈黙を守っていた乙骨と星也に移す。
「……星也さん、乙骨先輩」
一瞬 言うべきか迷ったが、警戒してもらうためにも言っておいた方がいいだろう。