第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
ハッと虎杖は目を覚まし、肘を支えに身を起こした。パチパチと爆ぜる炎の音が静寂の中でやけに響いて聞こえる。
頭の柔らかな感触は、破れた制服の代わりに着ていた黒いパーカー。ずれ落ちたコートにも見覚えがあって、一拍 遅れて星也がいつも着ているものだと気づいた。
隣には星也が片膝を立てて座っていて、正面には大きな瓦礫を椅子に乙骨が座っている。
「……あれ?」
「悠仁、気がついたか」
いつもと変わらない無表情だが、声音には確かに安堵したような響きがあった。
「星也さん……? 俺……」
心臓に折れた刀を突き立てられ、死んだはず……。
不意に乙骨と目が合って身構える。
「よ」
よ?
「よかった〜〜!」
先ほどまでとは別人のように眉を下げ、彼はへなへなと屈託のない笑みを浮かべた。
え? え? 何この人。
本当にさっき、自分を殺そうとしたのと同一人物か?
「九月頃かな。五条先生がわざわざ会いに来てね。君のことを頼まれたんだ。それで、やむを得ず芝居を打たせてもらった。星也さんも同じだよ」
「芝居……⁉︎」
おうむ返しに聞き返す虎杖に、星也も「そういうこと」と頷いた。
星也も乙骨と同様、九月頃。順平と出会った里桜高校の任務で、虎杖と挨拶を交わす前に話をしていたらしい。
二人に話されたのはほぼ同じ内容で、自分に何かあったら、今の一・二年のことを頼んだというもの。
特に虎杖のことは念を押されていたらしく、注意するよう再三 繰り返していたとか。
「僕たち以外に執行人を立てられたり、情報を断たれたりするよりは、こう立ち回るのがベストだと判断した」
「それで乙骨先輩が執行人を?」
そう尋ねると、隣で星也が小さく笑った。