第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「……じん……おい、仁」
花瓶に活けられた梅の花の鮮やかさに目を瞬かせると、険しい表情の老人が赤子を抱いた眼鏡の男性を呼んだ。
「なんですか、父さん。彼女の話をするなら帰りますよ」
「仁……オマエがどう生きようとオマエの勝手だ」
父と呼ばれた老人はそう言いながらも、重く静かな声音で「だが」と続ける。
「あの女だけはやめとけ……死ぬぞ」
「悠仁の前で変な話はやめてください。案外 覚えているそうですよ、赤ん坊の頃の記憶」
ねぇ、と眼鏡の男性は相好を崩しながら、赤ん坊を高く持ち上げた。
「オマエが子どもを欲しがっていたことも、香織との間にそれが叶わなかったことも知ってる!だが、香織が死んだのは――……」
「お義父さん」
遮るように割って入る女性に、二人の視線がそちらへ向く。
「何の話ですか?」
首を傾げて微笑を浮かべる女性――その額には、痛々しい縫合痕が刻まれていた……。
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