第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「なぜ俺がしぶといのかと聞いたな。教えてやる。俺には手本がない。何度も何度も間違える。それでも弟の前を歩き続けなければならん」
――だから、俺は強いんだ。
ドクドクと腹部から流れ出た血液が、地面に大きな血溜まりを作る。その血がザパッと波打ち、意思を持ったようにうねり、直哉を襲った。
「どういうこっちゃ⁉ なんで この出血で生きとんねん⁉」
「やっぱり……間違いなさそうだな」
驚愕する直哉に反し、星也は何かを理解したように顎に手を当てて頷く。
【呪胎九相図】は呪霊と人間の混血――呪力を血液へと変換できる特異体質を持っている。つまり、呪力が枯渇しない限り、失血死することもない。
脹相は血液を操り、こちらへ向かおうとする直哉の前に壁を作った。さらに血液の波を裂くように飛ばした【苅祓】だったが、それは軽く避けられてしまう。
まぁ、あの男からすれば遅い攻撃だろう。
脹相は柱の陰から姿を現し、両腕を伸ばして構えた。
――【穿血】‼
一直線に放たれた血のレーザービームをギリギリで避けられ、襲いくる血液の波を警戒する直哉へ血の波を含んだ足で蹴りを入れる。バシャッと脹相の血が直哉の袴を濡らした。
ズゥンッと直哉の動きが不自然に重くなる。袴の生地に滲みた血を固定したのだ。